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中村勇吾の日誌

直はしんどい

最近なぜか展覧会の仕事が多い。来年前半に開催される三つの展覧会に関わっていて、色々な打ち合わせに出席したりコンセプト文を書いたりプロジェクターの配置考えたりしている。ただ個人的には、展覧会の開催中に会場を居ることが結構苦手で「自分たちが良かれと思って展示しているものを他人が鑑賞している風景を直(じか)に目の当たりにする」というのになかなかのしんどさを感じ続けている。

 

私にとって展覧会は、開催中の風景をあれこれ想像しながら作ってる最中が最も楽しく、設営が終わった瞬間がクライマックスだ。無事設営完了し、ひとたび展覧会がはじまったら、必要時以外は一度も見に行かないのが常だ。不具合対応などで現地に行ったときも、展示を鑑賞しているお客さんをちら見して「うわほんとに見てるよ」とびびりながら退散する。以前やった「デザインあ展」はメンテナンスの為に何度も会場に足を運んだが、自分たちが作った映像にあわせて子供達が駆けっこしたりジャンプしたりする無垢で可愛らしい姿を見て、これまでにないリアリティに圧され、そそくさと逃げるようにその場から立ち去ったことを覚えている。以前「そんな覚悟で展示に関わるな」と言われたことがあるが、本当にそう思う。

 

ただその一方で、ツイッターやらなんやらで展覧会の感想を読むのはとても面白いのだ。雑誌やテレビなどで取り上げてくれたら普通に嬉しい。褒められたら喜ぶし批判を受けたら真摯に受け止めることが出来る。つまり、直(じか)のフィードバックはしんどくて、間に1メディアぐらい挟んだぐらいが丁度心地よい、ということなのだろう。いわゆるネットコミュニケーションの病理ってやつがこの展覧会における自分の心理に端的に顕れているように思う。

 

ただ、よく説かれるような「リアルな現場体験の大事さ」ってやつのもう一方にある「直のしんどさ」というものを積極的に捉える試みはもっとありえるのではないか、とも思うのだ。安易な現場体験至上主義に囚われない柔軟な展覧会のスタイルはないものだろうか、と考えている。

 

しかし残念ながら今回予定の展覧会企画ではそういう試みは一切無く、またもや直のしんどさと向き合うことになっている。まあがんばろう。大人だし。